つい最近、とても不思議な経験をしました。
 
私は、キャリアコンサルタント養成の講座を持つスクールの専任講師として
主にカウンセリングを教えています。
 
講座の最後には、
受講者のみなさんにアンケートをお配りし、
講義の評価をしていただくのですが、
 
つい先日、
これまで担当した講座の総合評価を
スクールからいただきました。
 
 
講師としての受講生からの評価は、
5段階中4.8。
 
自分で言うのもおこがましいのですが、
かなりの高評価をいただきました。
 
 
これだけの高評価ですから、
とても嬉しく、誇らしく感じるものだと
思っていたのですが…。
 
 

 
 

高い評価に恐怖を感じる不思議な感覚

高い評価をいただいたことを聞いた時、
まず真っ先に感じたのは、なんと、
 
恐怖
 
だったんです。
 
さらに、
 
アンケートでお寄せいただいた感想を
拝見した瞬間には、
 
血の気が引くような思いまでしたんです。
 
 
厳しい言葉が書いてあったから…では
ありません。
 
 
むしろ、
身にあまるほどの賞賛の言葉が、
そこには並んでいました。
 
 
でも、
血の気が引いて直視できなかったんです。
 
 
そして、思わず口をついて出た言葉が、
 
 
「なんてもったいない…」
 
 
申し訳ない思いでいっぱいだったのを、
今でも鮮明に覚えています。
 
 
 
よくよく考えてみれば、
 
褒めてもらって、高く評価してもらって、
それを、申し訳ないと感じるのは、
とても不思議なことです。
 
 
しかし、
あらためて過去を振り返ってみると、
 
こういう感覚に陥ることが結構あったな…と
思ったりもします。
 
□この成功は、みんなが助けてくれたから。
 私の力じゃない。
 
□たまたま運が良かっただけ。
 私の実力じゃない。
 
□偶然、自分を押し上げてくれる人に出会ったから。
 私はそんなにデキる人間じゃない。

 
 
もしかすると、
 
同じような経験をしたことがある方も
いらっしゃるかもしれません。
 
 
この不思議な感覚の正体、
 
それは、
インポスター現象と呼ばれるものです。
 
 

周りを騙しているような感覚「インポスター現象」

インポスター現象とは、
 
自分が高く評価されたり、
大きなことを達成したりした時、
 
それは本当の自分が成し遂げたことじゃい、
本当の自分はそんな素晴らしい人間ではないと、
まるで周りを騙しているかのような感覚
陥ること。
 
詐欺師症候群なんて呼ばれることもあります。
 
 
謙遜とは異なります。
 
心底、
自分はその成功に値しない、
自分は嘘つきで、
いつかこの嘘が暴かれてしまうと
 
信じているのです。
 
 
ですから、
 
何かを達成して高い評価を得たとしても、
その成功を喜ぶことができません
 
むしろ逆。
 
成功や達成を重ねるごとに、
本当の自分はもっとダメダメなのにと、
自己イメージを下げてしまいます。
 
そして、
 
ダメダメな自分を評価してくれた周りの人たちを
失望させてはいけないと、
 
より完璧な自分を目指して、
がんばり過ぎてしまいます。
 
 
皮肉なことに、
頑張ればがんばるほど評価は上がっていきますから、
 
さらに自己イメージを下げてしまうという悪循環。
 
 
成功や達成が全然楽しくなく、むしろ苦痛で、
場合によっては高評価を避けたくなることすら
あります。
 
 
叶えたい夢、達成したい目標がある方にとっては、
困った状況…と言えるでしょう。
 
 

インポスター現象の原因とは

そもそも、
インポスター現象はなぜ起こるのでしょう?
 
 
その要因は一つではなく、
様々なものが絡み合っていると考えられます。
 
アメリカの心理学者ボリーヌ・R・クランス博士は
自身もインポスター現象に苦しんだ経験を持ち、
その著書の中でインポスター現象の原因について
語っておられます。
 
 
その中のひとつに、
 
「誉め言葉の欠如」
 
があります。

インポスター現象の家族は、表立って子どもの能力を認めたり、子どもが達成したことを祝福したりほうびを出したりはしません。誉めすぎると、子どもが傲慢になるのではないかと、親が純粋に心配している場合があります。そのようにすると子どもが他の子どもたちとあまりにも違ってしまうのではないかと心配していることもあります。親の中には、別の兄弟を頭の良い子または「スター」として選んでしまっており、その間違いを認めたくないと思っている人もいます。

(「インポスター現象」ボリーヌ・R・クランス著、小此木啓吾・大野裕訳、筑摩書房、1988年初版第一刷)

 
家族との関係に限定した記載であり、
また、
日本ではない文化の中での記載ですが、
 
私自身が経験したことや
相談に来てくださった方々のお話から
強く共感した一節です。
 
 
特に、
 
本人のために良かれと思ってしたことが、
逆に本人を苦しめることにつながってしまっていること、
 
大人になれば、誰もが持つような人間らしい感情
(期待、間違いを認めたくないなど)の影響の大きさ
 
といった点は、
相談の中でも語られる事が多いように
感じています。
 
 
もちろん、
これが原因の全てではありません。
 
しかし、
 
物心つく前からの、
自己イメージを創り上げる環境の影響というのは、
たとえ悪気がなかったとしても、
無視できないものなのでしょう。
 
 
実は、本人自身、
 
こうした環境の影響を受けて今の自分があることを
薄々感じている場合があります。
 
 
そして、
 
だからといって
親や周りの誰かを責めたりするのは違う
ということも、
 
よくわかっています。
 
 
そう、よくわかっているのです。
 
 
居心地の悪さや辛さの真の原因は
ここにあるように、私は感じています。
 
 

自分で自分を責めなければならないことが辛い

すべては自分の責任で、
自分がちゃんとできていないのが悪い
 
つまり、
 
自分で自分を責めなければならない
 
ということ。
 
これが、辛さの原因ではないでしょうか。
 
 
行き場のない気持ちを、
「すべて自分の責任」という形で
自分自身に向けなければならないのは、
 
とても重くきついものです。
 
 
しかも、この心の動きは、
 
誰も止めてくれないですし、離れることもできません。
 
自分でブレーキをかけなければ
延々と続いてしまいます。
 
 
何か、少しでもできなかったことがあれば、
 
「どうして自分は完璧にできないのだろう」
 
と考える。
 
それまでどんなにがんばっていたかも、
他の部分がどんなに高く評価されていても、
 
自分自身が「できなかった」ただ一点に
集約されてしまい、
 
さらに、
「できなかった」悔しささえ味わうことなく、
 
「そんなことを思ってはだめだ」
 
と否定して、
 
もっと頑張らなくては、と、
自分を責め続ける感覚。
 
 
覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。
 
 
これ、一言で言えば、
 
自分を受け入れることができない
 
状態といえます。
 
 
こうした辛さを抱えている時、
 
等身大の自分を受け入れましょう
 
と言われる事がありますが、
 
本人にとっては、言葉で言うほど、
簡単なことではありません。
 
 
その等身大の自分こそ、
詐欺師のように感じているからです。
 
 
ですから、私は、
 
受け入れることを無理強いしてはいけないと
思っています。
 
 
その代わり、
 
ちょっとだけ立ち止まって
想像してみていただきたいことがあります。
 
 

インポスター現象から抜け出す第一歩

もし、先に書いたように、
 
過去の環境が、自分の達成や成功にとって
過酷なものであったとしたら、
 
今ここにいる自分は、
 
その過酷な環境を乗り越えてきたということです。
 
 
そして、
 
今、どんなに居心地が悪い感覚で、
達成や成功に不安や恐怖を感じているとしても、
 
それは、
 
過去の自分が、過酷な環境を乗り越えるために、
考え工夫してきた証でもあります。
 
 
だとしたら、
 
責めるより先に、
 
これまでよくがんばってきた、と
労ってあげてもいいのではと、私は思うのです。
 
 
「これまでいろいろなことがあった。
 それらを乗り越えて、今自分はここにいる」
 
と、これまでのがんばりを労ってあげること。

 
 
これが、
達成や成功への第一歩。
 
 
気休めのように感じるかもしれません。
 
しかし、
 
インポスター現象に苦しむ方は、
いっときも気が休まる時がありません
 
  
それを思うと、
 
たとえ「気休め」と言われたとしても、
気が休まるほんのひと時は、貴重な時間だと
私は思います。

 
 
いっとき気が休まった、その後に、
これからの自分のためにできることを考えてみましょう。
 
 
その達成や成功は、
本当に運だけだったでしょうか?
 
達成した事に対する申し訳なさは、
これからの自分の役に立ちそうでしょうか?
 
一緒に考えてみませんか?
 

 
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